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そんな事を想い出していると、今度はあの老釣り師の言葉が
頭に浮かんできた・・・・

「お前の眼に映っているのは魚じゃない・・・ 
 その魚探のスクリーンだけだ。
 本当の自分を見つめなおせ。
 釣りの好きだったあの頃の自分を思い出せ。
 そうすれば、いろんな物が見てくる。」

その時輝幸は、周囲の山々の様子・・・
湖面の波の様子・・・
吹く風の様子・・・・
肌に感じる空気の匂い・・・
そんな、ナチュラルな感覚をいっぺんに感じる事が出来た。

機械にしか向けられていなかった心が、ぐんぐん外に向けて
放出されてくる感覚・・・・・
同時に、自然界のありとあらゆる要素が、体の中に
取りこまれていく感覚・・・・

輝幸は、大きく大きく深呼吸した・・・。

そして、手をひろげぐるっと360度見渡した・・・・。

懐かしい感覚がぐんぐん蘇ってくる。
その目は、少年のそれのように輝き、頭の中は
打算や駆け引きなどない、純粋に湖と・・・
そして魚と向き合う心しか宿っていなかった。

輝幸は静かに魚探のスイッチを切った。
そして、エレクトリックモーターを湖面から引き上げた。

ゆっくりとコクピットに座ると、195馬力のモンスターに
火を入れた。


2008年9月 5日(金)

NO-FISH・過去記事
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