弓道一直線

今日は、久しぶりの定休日です。

日々の喧騒から逃れ、一人祇園辺りを散策しておりました。

花見で有名な円山公園の中にひっそりとたたずむ弓の道場があります。

僕は、弓の経験は全くないのですが・・・

たまに見るあの凛々しい袴姿は”かっこええなー”と憧れておりました。

円山公園、”大弓”・・。

実は、ここには幼少の頃の鮮烈な思い出があったのです。

まだ、小学校にも行ってないころおじいちゃんに連れられて来た記憶があります。

おじいちゃんは、弓を嗜んでおりましたので常連さんのようでした。

そこは、門下生だけではなく一般の方も自由に弓を引くことが出来ます。

普通は危ないので、子供は入れないのですがおじいちゃんの顔で入れたのでしょう。

さて、その鮮烈な記憶は後で紹介するとして・・・

そんな、思い出を懐かしむと同時に、真剣に集中して何かをやりたいと思い

30年以上ぶりに、道場の門をくぐりました。

昔の記憶では、大きかった道場が非常に狭く感じます。

日置流騎乗式弓・・・。

座位で弓を射るのです。

やさしそうなおばちゃんが出てきました。

”あのう、ド素人なんですがご教授願えるのでしょうか・・・?”

”ええ、どうぞ、どうぞ・・・”

と、いきなり弓矢を渡され的の正面に座らされます。

的との距離は14m。

初めてなので、最初は軽めの弓を渡されました。

一通り順序を習って、いざ一矢・・。

矢は的を大きく右に外れます。(当然・・・)

弓道をされる方には当たり前なんでしょうが、弓を引くときに

左手(弓を持つ方)を外側に搾らなければならないそうです。

弦を引く力と、搾る力が同じになって初めてまっすぐ飛ぶのだそうです。

必要以上の力が入って、狙う余裕などありません。

5本も射ると、手が震えてきて汗もかくのでさらに滑ります。

となると、また変に力が入る・・。

結局、規定の16本射ったうち、一本も的に当たることはありませんでした。

”お母さん(僕は年の離れた女性にお母さんと呼びかける癖があります)

 泣きの一本射らせてください・・・”

”ええ、どうぞ、どうぞ”

一本もらって、神経を集中させます。

左手の搾り、右手の引き、姿勢、狙い・・・

しかも、力を入れすぎないように、集中・集中・集中・・・・・

カシーン・・放ちます。

矢は、的をかすめて僅かに外れました。

お母さんは褒めてくれました。

的の左に外れたからなんです。

次に来たら、当たりますって。

左手の搾りの感覚は、誰にも分らない。

自分だけしか分らない感覚です。

その感覚を”手の内”というのだそうです。

手の内を人に見せない・・・と言いますが、そこから来てるのでは?と教わりました。

弓道にしろ、なんにしろ”道”を極めるには長い道のりが必要ですね。

なになに道・・・とはよく言ったものです。

これから、たまに通うことになりそうです・・・。

 

さて、子供の頃の鮮烈な記憶のお話・・・・・。

実は、その道場の壁には歴代の名人や位の書いた額が何枚も飾ってあります。

当時、まだ5歳くらいだった僕におじいちゃんが後ろで支えて弓を引かせてもらったのです。

でも、構える時に弓が大きすぎて弓から矢が右に外れて行ったのですが、

僕は恐くてそのまま右手を放してしまったのです。

矢は、45度の角度で道場の壁を何メートルも引き裂いて飛んでいきました。

その額も犠牲に・・・・。

おじいちゃんは、平謝り・・。

僕は、わんわん泣くばかり。

その額は、今も同じところに破れたまま飾ってありました。

お母さんに、実はあの額を破ったのは僕です・・・と告白したら

大笑いで、”そうかー、そんな大昔に来てくれたんやねー、ありがとう”と

逆に御礼を言われちゃいました。

それから、しばらくおじいちゃんの事とかを話して道場を後にしました。

来週にでも、また行ってみようと思います。

皆さんも、祇園に来られたら覗いて見てください。

見事、引き裂かれた額を・・・・。

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2005年10月12日(水)